8月8日 日報抄
- 身近にあるものが矢となって人を傷つけることがある。例えば石がそうだ。足元に転がる石をつかんで投げれば、たちまち武器に変わる。当たり所によっては命を奪うこともある。
- 〈石をもて追はるるごとくふるさとを出でしかなしみ消ゆる時なし〉。この歌を詠んだ石川啄木は人間関係のいざこざから故郷を去らざるを得なくなったようだ。実際に石を投げられたわけではないだろう。啄木に飛んできたのは容赦ない言葉だったろうか。冷たい視線だったのだろうか。
- 現代も言葉の石つぶてが飛び交う。ネット空間では顕著である。匿名を隠れみのに、とがった石のような言葉が飛んでくる。
- 誹謗中傷が野放図に飛び交えば、社会は生きづらくなる一方だ。好き勝手に石を投げていれば、いずれ無数の石つぶてを浴びることにもなりかねない。
(2021-08-08 新潟日報)