講義No.10975
石川啄木の新しさ 近代短歌の「アップデート」とは
石川啄木の試み
明治時代の日本は近代化を遂げ、社会は大きく変化しました。近代化の波は文学にも及びます。短歌も例外ではありませんでした。そんな時代に、万葉集の時代から続く短歌を適応させる役割を果たしたのが、明治を代表する歌人、石川啄木です。代表作に「ふるさとの訛(なまり)なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく」という短歌があり……。
言葉の近代化に向き合う
同じく啄木の「何やらむ/穏かならぬ目付して/鶴嘴(つるはし)を打つ群を見てゐる」という短歌は、「テイル」という形で終わります。これは当時の工夫の一つでした。古典では、時を表す助動詞は「つ」「ぬ」「たり」「り」「き」「けり」と多くの種類があり、和歌(昔の短歌)にも多く使われています。明治期に入って、書き言葉を話し言葉に近づけようとする「言文一致運動」など言葉の近代化によって、こうした助動詞はすべて「た」に集約され……。
アップデートは続く
短歌が近代化に適応できたのは、啄木のように、当時の歌人たちが短歌をアップデートさせたことが大きく関係しています。こうした試みは時代を経ても受け継がれ、現代でも口語を交えて表現する俵万智の『サラダ記念日』のような短歌が生まれ続けて……。
◎河野 有時 先生
京都ノートルダム女子大学
国際言語文化学部 国際日本文化学科 教授
(Yumenavi 夢ナビ編集部)