〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

〈… その子、五歳になれり。〉子をうるさきものと思ふ啄木だが…

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チャペルのステンドグラス 藤城清治美術館 

談話室 山形新聞

  • 石川啄木の第2歌集「悲しき玩具」は肺結核のため26歳で没した2カ月後に刊行された。闘病から最期を迎えるまでの生活を詠んだ歌は、必然的に哀調を帯びる。ほほ笑ましいわが子の成長ぶりが題材だったとしても。
  • 例えばこうだ。〈病みて四月-/その間にも、猶(なお)、目に見えて、/わが子の背丈のびしかなしみ。〉。こんな歌にも寂寥(せきりょう)感が漂う。〈いつも子を/うるさきものに思ひゐし間に、/その子、五歳になれり。〉。子を疎んじていたことを悔いても、自身に残された時は少ない。
  • そのような状況で幼子の愛らしさに改めて気付いたのであろうか。〈五歳になる子に、何故(なぜ)ともなく、/ソニヤといふ露西亜名(ろしあな)をつけて、/呼びてはよろこぶ。〉。幼児の笑顔は親をも無邪気にさせる力がある。福岡県篠栗町で餓死した5歳男児も本来はそうだったはずだ。

(2021-03-04 山形新聞

 

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