〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「なつかしき冬の朝かな。湯をのめば、湯気やはらかに、顔にかかれり。」啄木

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シダレウメ

みすず野

  • コロナ感染拡大は、病床逼迫度を高め、家庭待機者が増えて、感染者自身の不安や家庭内感染の危険を増す、といった問題を生じさせている。
  • それでも私たちというか、現役世代は働き続けなければならない。「はたらけど/はたらけど猶わが生活楽にならざり/ぢつと手を見る」とうたったのは、かの石川啄木で、彼は困窮の果てに、26年の短い生涯を閉じたけれど、幸せな時間が全くなかったわけではない。「なつかしき冬の朝かな。/湯をのめば、/湯気やはらかに、顔にかかれり。」
  • 「ある日のこと/室の障子をはりかへぬ/その日はそれにて心なごみき」の歌もある。何とささやかな幸福だことだろう。豊かな生活を送り、それが当たり前に過ごしてきた現代人には、やり過ごしてしまう日常だが、啄木にはかけがえのない、いとおしい時間だった。コロナで苦しい生活を強いられた人には、啄木のこの心境がわかるのでは。

(2021-01-27 市民タイムスweb みすず野)

 

2021.1.27 みすず野 | 連載・特集 | 株式会社市民タイムス