新生面
- <私は暖かい南の方の、ちっとも雪国でない地方の人たちに、この本を読んでもらいたいのである>。民俗学者の柳田国男は、『雪国の春』と題した著作をこんな文章で始めている。雪国の山里では<たいていの交通は春なかばまで猶予せられ、他国に旅する者の帰ってこぬことにきまっている>。
- 県内はじめ列島は、厳しい寒波に見舞われての年越しとなった。加えて新型コロナウイルスの感染拡大による帰省自粛もあって、柳田が描いた大正期の雪国の寒々とした光景が、今に重なる。
- 1年の憂いを包んだ県内の積雪はきのう、陽光を照り返し、むしろ青空の明るさを際立たせていた。<何となく、今年はよい事あるごとし->(石川啄木)。少なくとも昨年よりは、そんな気持ちがする。
(2021-01-01 熊本日日新聞)