〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木にとって上野駅はふるさとにつながっている

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啄木歌碑 上野駅前通り商店街

バックミラーのいとしい大人たち

ふるさとの匂い、タクシーに乗って 上野駅の年末年始

 鉛筆画家 安住孝史氏

  • お客様は降りるとき、荷物の中から取り出したリンゴをひとつ、僕に手渡してくれました。はるばる青森からお客様と一緒に東京にやってきた手土産のりんごです。ふるさとのいい匂いが、車内に残りました。
  • 東京駅と上野駅は、山手線なら間に駅3つをはさんだだけの近さですが、どこか違います。東京駅は洗練されていて、さすが首都の表玄関というべき存在です。昔は乗り降りする人も、両駅で違うような気がしました。上野駅は土の匂いがしました。
  • 「ふるさとの訛(なまり)なつかし停車場の人ごみの中にそを聴きにゆく」と詠んだ石川啄木にとって、上野駅はふるさとにつながっていました。東京の下町、下谷で生まれ浅草で育った僕にとっても、上野駅はふるさとの駅です。
  • ふるさとの駅で乗せたお客様からふるさと自慢を聞く。これはとても心地よく楽しみなことでした。ふるさとは遠くに離れていても忘れがたく、しみじみ愛(いと)おしいものなのだと思います。

(2020-12-20 日経電子版 出世ナビ)

 

青森へ「出世列車」が里帰り 上野駅の年末年始、タクシーにふるさとの匂い|NIKKEI STYLE