個人が文士を支えた古きよき時代の「証文」
書名 『文豪と借金』
サブタイトル 泣きつく・途方に暮れる・踏みたおす・開きなおる・貸す六十八景
監修・編集・著者名「文豪と借金」編集部 編
文豪の言動や作品をまとめたアンソロジーが最近よく出版されるが、なるほど、この手がまだあったのか、と感心したのが、本書『文豪と借金』(方丈社)である。副題にあるように、「泣きつく・途方に暮れる・踏みたおす・開きなおる・貸す」という5つのパターンで、文豪たちの借金へのかかわり方をまとめたものだ。
○ 個人対個人の濃密な人間関係
○ 生涯に、いちどのおねがいと泣きつく太宰治
○ 60人から踏み倒した石川啄木
- 友人の宮崎郁雨がまとめた「啄木の借金メモ」は壮絶だ。故郷の岩手県の渋民、盛岡、仙台、北海道、東京と貸した人の居住地別に個人名と金額が記されている。約60人から合計1372円を借りている。
- 宮崎は「彼はその借金の拙劣さのために、自らの世間を狭めてしまったのである。(中略)このメモに現れた彼の姿の、何という見すぼらしさであろうか。」と書いている。彼がもし本当に借金の天才であれば、もっと大がかりな借金をすることも難しくなかっただろう。
○ 川端康成の異常な金銭感覚
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書名 『文豪と借金』
サブタイトル泣きつく・途方に暮れる・踏みたおす・開きなおる・貸す六十八景
監修・編集・著者名「文豪と借金」編集部 編
出版社名方丈社
出版年月日2020年4月29日
定価本体1400円+税
(2020-04-17 デイリーBOOKウォッチ)