学芸余聞
「啄木の思い込み」が背景
国際啄木学会東京セミナーは東京都千代田区の明治大学でこのほど開かれた。
- 同学会前盛岡支部長の小林芳弘さんは1904(明治37)年の「相馬徳次郎排斥事件」について論考。渋民尋常高等小校長だった相馬は、「酒のめば/刀をぬきて…」という啄木の短歌と日記の記述から、その奇行によって啄木らに排斥された教師不適格者とされてきた。
- 啄木と旧知の上野サメの回想記や啄木の日記の再検討から「相馬校長が渋民小から転出したのは通常の人事異動。排斥運動が成功したという啄木の思い込みが、3年後のストライキ事件の背景にある」とした。
- 研究発表した明治大大学院の応宜娉(おうぎへい)さんは、1934(昭和9)年4月、中国の新聞「庸報」の文芸欄に東京から「香山(こうざん)」という人物が寄せた啄木生誕50年の記念文について考察した。
- 筆者は中国左翼作家連盟メンバーの張香山と推測。「香山はプロレタリア文学者たちが描いた啄木像に触れ、共感。啄木を『時代閉塞に宣戦し光明に向かう文学者』ととらえ、左翼同士を励ますために寄稿した」と述べた。
(2020-02-12 岩手日報)