卓上四季
流氷の遅れ
- 「しらしらと氷かがやき/千鳥なく/釧路の海の冬の月かな」。釧路港を見渡す釧路市米町公園に石川啄木の歌碑がある。1908年(明治41年)1月から4月にかけて滞在した釧路での経験は、数々の印象深い作品を生んだ。
- 凍(い)てつく海には流氷が姿を現したようだ。「さらさらと氷の屑(くず)が/波に鳴る/磯の月夜のゆきかへりかな」という歌も残している。今でこそ流氷が釧路まで南下するのは極めてまれだが、釧路地方気象台によれば、1950年代から70年代には毎年のように眺めることができた。
- 先週末、紋別には流氷が接岸した。1日遅れて網走は流氷を陸上で確認できる「流氷初日」を迎えたが、46年の統計開始以来、2番目に遅い観測という。「流氷博士」と呼ばれた故青田昌秋さんは、「流氷の存在そのものが恵み」と説いた。その言葉が切実に響く地球環境の今である。
(2020-02-11 北海道新聞)