言ノ葉ノ箱 東 直子
空に吸われる
不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
石川啄木
- この三行書きの短歌は、明治43年に発行された啄木の第一歌集「一握の砂」に収載され、時を越えて愛唱されている。草の上に寝ころべば、視界は空ばかりになる。思春期特有の自意識や戸惑いが、晴れた広い空に吸われるような心地がして、気持ちを落ち着かせることができたのだろう。
- 26歳で夭折(ようせつ)した啄木の作品は、そのすべてが若いときの作品ともいえるが、「十五」歳という思春期の具体的な年齢を詠み込み、その心理を描くことで突出した個性を打ち出した。啄木と同じ26歳で亡くなった尾崎豊に「15の夜」という歌があるが、啄木の影響を受けているのだろう。(歌人・作家)
(2019-10-30 中國新聞)
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