〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木の担任教師・冨田小一郎の孫とキーンさん

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[月の松 上野清水観音堂]

ばん茶せん茶

「一期一会の縁」  戸田洋子

  • 2月、テレビでドナルド・キーン氏の訃報が流れた。思えば、石川啄木没後100年の2013年6月、啄木研究家としても著名なキーン氏による「啄木を語る」と題した講演会が、岩手県民会館で開催され、聴衆2千人余が耳を傾けた。
  • かねてより、啄木は一体どのような教育を受けた人物なのか、盛岡中当時の担任教師について詳しく知りたいとキーン氏は希望されていた。講演会の翌日、光栄にも担任教師・冨田小一郎の孫である私も、お目もじの機会をいただいた。祖父は啄木に「よく叱る師ありき/髯の似たるより山羊と名づけて/口真似もしき」と、歌に詠まれるほど、生徒たちには厳しい教師であったようだ。私たち孫に対しては、ごく普通の優しい好々爺であった。
  • その秋、私宛てに大きな封書が届いた。開封すると、丁寧な礼状と、直筆の色紙が同封されていた。細やかな心遣いをなさる氏の優しさに触れ、言い知れぬ感動を覚え思わず涙がこぼれた。

(2019-04-03 岩手日報