[河津桜]
盛岡の街を代表する「声」って何だろう。車…
- 盛岡の街を代表する「声」って何だろう。車の音に囲まれた今と違い、昔の街には風情ある声が響いていた。それが豆腐売りの声だと石川啄木は言う。「午時(ひる)近くなつて、隣町の方から、『豆腐ア』といふ、低い、呑気な、永く尾を引張る呼声が聞えた」。この語尾を引っ張る「豆腐ア」こそ、「盛岡の声」ではないか。小説「葬列」の中で啄木は断じている。
- ところで、街を歩く豆腐売りの呼び声は雨のようだと啄木は書く。のんびりした発声が雨のように聞こえた。「総じて盛岡は、其人間、其言語、一切皆克(よ)く雨に適して居る」。雨の盛岡を、歌人はとりわけ好んだ。
- いつの間にか立春も過ぎて、きょうは「雨水」。寒さが緩み、気がつけば春の雨がしたたる時季を迎えた。あすは啄木の誕生日でもある。明治の昔なら、豆腐売りの声が春雨のように響いてくる頃だろう。
(2019-02-19 岩手日報)
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