〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「軽きに泣きて 三歩あゆまず」のあとに しみじみとした悲しみが…

f:id:takuboku_no_iki:20181124193652j:plain

[どんぐりころころ]

否定の表現が生み出す効果

  • 否定の表現は冷たい拒絶を感じさせる時もあれば、感情をより豊かに表現することもあります。「塔」選者の栗木京子さんが、石川啄木の 一首を引いて解説します。




  • 否定の表現というの は不思議です。「できない」「そうじゃないでしょ」などと言われると冷たい拒絶を感じてしまうのですが、同じ否定でも「忘れない」「涙をとめられなかっ た」などと言われると「覚えている」「涙がずっと流れていた」と言われるよりも重みが伝わってきます。



   たはむれに母を背負ひて/そのあまり軽きに泣きて/三歩あゆまず


  • 石川啄木(いしかわ・たくぼく)『一握の砂』。明治四十一年六月、二十二歳のときの歌です。
  • 冗談半分に母を背負ってみたら、あまりに軽いので驚いたのです。母に苦労をかけているのだなあ、という悔いが心を締め付けたことでしょう。結句「三歩あゆまず」に、涙があふれて歩けなかった様子が臨場感をもって描かれています。「あゆまず」の否定のあとに、しみじみ と広がってくる悲しみが感じられます。

  『NHK短歌』2018年11月号より
(2018-11-23 niftyニュース)

否定の表現が生み出す効果 - (1/2)|ニフティニュース