[ハナミズキ]
本よみうり堂 空想書店
11月の店主は司修さんです
読まれるための日記
- 石川啄木の『ローマ字日記』は、赤裸々に語る。
- 妻・節子への思いは強く、「予は妻を愛している。愛しているからこそこの日記を読ませたくない。――しかしこれは嘘だ」と書きはじめる。
- 明治三十五年十月三十一日、啄木十七歳。盛岡駅から東京へ向かう日の午前、節子が訪ねてくる。天才・啄木の日記は、恋人との別れからはじまる。上田秋成の「菊花の約」にあるような妖しくも悲しい語らい。とても十七歳とは思えない。
- 「別れなればの涙にわが恋しの君訪れ玉ひぬ。まこと今日のみならじ。――骸は百四十里のかなたにへだつとも魂は常に聖なる宮の燭影のゆらぎに相抱かむ。――タイムは飛ぶが如くすぎて。涙!!!涙!!!涙!!!かへらせ玉ひぬ。」
- 日記はもともと人に読ませるために書くものではない。が、書く、という行為に、「読んでもらう意識」がぶらさがる。
店主(司修さん)の1冊
『ISIKAWA TAKUBOKU ROMAZI NIKKI』(岩波文庫、660円)ローマ字化されただけなのに、木漏れ日の揺れるさまを読む感覚で、詩人の真の姿が見えてくる。
(2018-11-21 読売新聞)