〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木が生きていれば「ふるさと納税」制度を活用したかも…

小社会 高知新聞

  • 所用で東京に出掛けた際、JR上野駅に降り立った。この駅で必ず頭に思い浮かべるのはあの短歌だ。石川啄木の〈ふるさとの訛(なまり)なつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きにゆく〉。
  • 第1歌集「一握の砂」の「煙」という章にあるが、章の101首のほぼ全てが古里がテーマ。〈石をもて追はるるごとく ふるさとを出でしかなしみ 消ゆる時なし〉。つらい思い出が拭えない一方、古里への強い思いは断ち切ることができなかったのだろう。
  • 啄木が現代の東京に生き、生活に余裕があれば、「ふるさと納税」制度を活用して、〈恋しかり〉と詠んだ故郷の渋民村(現盛岡市)に恩返しを考えたのではないか。ひょっとすると、頑張る自治体を応援しようとしたかもしれない。
  • 〈田も畑も売りて酒のみ ほろびゆくふるさと人(びと)に 心寄する日〉。100年余り後の地方の疲弊が重なる。

(2018-11-09 高知新聞

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