[ナナカマド]
小社会
- 石川啄木は20代の初め、函館、札幌、小樽、釧路と北海道を転々とし新聞社に勤めながら文学を志していた。そのころの短歌に〈霙(みぞれ)降る石狩の野の汽車に読みしツルゲエネフの物語かな〉。
- 車窓から見える広大な原生林。19世紀ロシアの作家、ツルゲーネフの小説を読んでロシアの大地もかくもありなんと連想したのか。困窮の中で一家離散し放浪する啄木。その暗くさみしい気持ちも、荒涼とした森の雰囲気にぴったり重なったのかもしれない。
- いつの日かまた、自然とともに生きる営みの再開を。心からそう願う。
(2018-09-25 高知新聞)