[コムラサキシキブ]
「風土計」
- 若山牧水が友人・石川啄木の歌を評した一文は、なかなか面白い。「バカバカしいくだらぬ歌の方が多い」「どこがいいのか解らないようなところに彼の偉がある」。
- けなしているのか、褒めているのか。こう牧水は言っている。「歌を作るぞ」と啄木が構えて詠んだ作はつまらない。むしろ独り言を言うように、正直に、自然にあふれ出たものは「実にいいのがあるのである」。
- 17日に没後90年を迎えた牧水は、臭みのある歌を嫌った。臭みとは気取ったり、てらったり、独りよがりの歌を指す。「歌を作るぞ」と構えるのではなく、感じたままを詠む。表現の際は「正直」こそ大事とした。
- 「正直に詠まなくては駄目だ。幼稚だと思はれても構はない」「兎(と)に角(かく)、正直に、素直に詠むべきである」(「短歌作法」草稿)。