〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 啄木の歌は バカバカしいくだらぬ歌の方が多い 若山牧水


[コムラサキシキブ]


「風土計」

  • 若山牧水が友人・石川啄木の歌を評した一文は、なかなか面白い。「バカバカしいくだらぬ歌の方が多い」「どこがいいのか解らないようなところに彼の偉がある」。
  • けなしているのか、褒めているのか。こう牧水は言っている。「歌を作るぞ」と啄木が構えて詠んだ作はつまらない。むしろ独り言を言うように、正直に、自然にあふれ出たものは「実にいいのがあるのである」。
  • 17日に没後90年を迎えた牧水は、臭みのある歌を嫌った。臭みとは気取ったり、てらったり、独りよがりの歌を指す。「歌を作るぞ」と構えるのではなく、感じたままを詠む。表現の際は「正直」こそ大事とした。
  • 「正直に詠まなくては駄目だ。幼稚だと思はれても構はない」「兎(と)に角(かく)、正直に、素直に詠むべきである」(「短歌作法」草稿)。

(2018-09-18 岩手日報


記事