[ヤマツツジ]
本と話題
「よみがえる啄木の構想」 近藤典彦
石川啄木 著・近藤典彦編『一握の砂』『悲しき玩具』へのお誘い
- 石川啄木の研究史は100年を超え、私の啄木研究も30年を超えた。今しみじみ実感しているのは、啄木は文学・思想 2領域での天才だった、ということだ。かれの全作品はその二つの天才の産物である。
- 歌・詩・小説・評論のみならず日記や手紙にまで満ちている魅力の根源はそこにある。その啄木の全作品の結晶が『一握の砂』『悲しき玩具』だ。これが私の研究の結論である。
- 1昨年4月、私のブログやホームページを読んだという未知の方から手紙をいただいた。
- 「『一握の砂』の有名な2つ、3つの歌しか知らなかった私にとって、啄木の作ったすべての歌と先生のご解釈は非常に刺激的でした。……啄木の作った歌の多くが、100年以上経った今の若者にも通じるのです。……私は今、同世代の友人たちにも啄木を薦めております」と。
- 啄木文学の最高傑作は『一握の砂』だが、この歌集の編集・割付に彼は想像を絶する巧緻をはりめぐらせた。「一ページ二首、見開き四首」の構成にはじまって幾百の仕掛けがある。仕掛けの主要なものは新潮文庫版、岩波文庫版その他一切の版ではまったく見えない。
- このほど刊行された桜出版の 2歌集でのみ啄木の巧緻を遺憾なく鑑賞できる。若い読者は日本と世界の啄木新受容の突破口になってほしい。
桜出版は岩手県の小出版社。
(近藤典彦 こんどう・のりひこ 元国際啄木学会会長)
(2018-05-13 しんぶん赤旗)
- 『一握の砂』 石川啄木 著・近藤典彦 編 1000円+税
- 『悲しき玩具』一握の砂以後 (四十三年十一月末より) 石川啄木 著・近藤典彦 編 1000円+税
◎ 桜出版 電話. 019-613-2349 FAX. 019-613-2369