〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 石川啄木が詠んだ「奇人」万平 函館

北海道)わがまち遺産 国際都市を彩った「奇人」たち

  • 1854(安政元)年の日米和親条約により、いち早く開港した函館(箱館)。異国の文化が交差し、自由な気風の漂う街を彩ったのが、「愛すべき奇人」たちだった。
  • 函館山のふもとの函館市船見町には、外国人墓地や寺院が集まる。函館湾を望む地蔵寺の境内に、「万平塚」と彫られた立派な五輪塔が立っている。
  • 「むやむやと/口の中(うち)にてたふとげの事を呟(つぶや)く/乞食(こじき)もありき」――石川啄木が「忘れがたき人人」として詠んだ「奇人」万平の供養塔だ。家々のごみ箱をあさったが、施しは受けなかったという。地蔵寺の永井正人住職は「誇りとユーモアを持ち合わせ、いわゆるベガー(物乞い)ではなかった」と話す。
  • ある鉄工場主が万平にたばこの火を借りた際、「帽子も取らず、失敬じゃないか」となじられた。その気位に感服した工場主が、供養塔を建てたのだという。
  • 地蔵寺の万平塚の向かいには、引き取り手のない遊女らを弔った「有無両縁塔」もある。永井住職は「二つの石塔は、この寺が分け隔てなく広く門戸を開け、『来る者を拒まず』を貫いてきた証し。誇りに思います」と話した。(阿部浩明)

(2018-05-06 朝日新聞


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