〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 小樽 啄木歌碑除幕式、小樽文学館 啄木と多喜二、旧居 <2>

啄木文学散歩・もくじ


(「啄木の息HP 2005年秋」からの再掲 + 2018年早春 + 1999年夏)

  * 写真について 撮影年が記されていないものは2005年撮影


1  小樽駅と啄木 つづき)


「駅正面にある案内板」


駅を出たところには「石川啄木小樽駅」という案内板がある。




2018年の案内板

左下に小さく「左手の階段を上がると石川啄木の歌碑があります。」と加えてある。

その階段が下の写真。


三角市場への階段(2018年)


階段を上がったところの左上に、啄木歌碑の裏面が見える。





小樽日報社社屋 明治40年撮影小樽文学館内の展示 2018年)


〇の中が「小樽日報社社屋」、右上から中央下へかけての長い建物が「中央小樽駅」続いて線路をたどり、左下の建物群が鉄道官舎。


啄木の姉の夫であり、この駅の駅長を務めていた山本千三郎の住まいもここにあったはずだ。明治40年9月、小樽に着いた啄木はまず、この山本宅に数日間滞在する。


小樽日報社屋
「社は新築の大家屋にて、万事整頓致居、編輯局の立派なる事本道一番なる由に候……」(明治40年10月2日、函館・岩崎正宛ての手紙)

 (「風のごとくに 小樽の啄木」 小樽啄木会・編 2012年発行)



駅長官舎と石川啄木
「明治四十年九月啄木が「小樽日報」創刊時に、記者として赴任してきました。当時啄木の姉トラの夫である山本千三郎は中央小樽駅(現在の小樽駅)の駅長でした。啄木とその家族は函館の大火にあい小樽に来て、花園町の借家が決まるまで駅長官舎に滞在しました。
啄木は「小樽日報」の三面記者として大いに活躍します・・・」
([啄木歌碑趣意書])

2 啄木歌碑の除幕式 小樽駅前  2005年10月23日
 

SLの 汽笛が祝す 除幕式
ニセコ号出発の煙が碑の右に上っている。

  
市内3番目の啄木歌碑誕生となった。建立場所は、駅前広場から三角市場に上る石段の左側。駅長官舎がこの三角市場あたりにあったため、縁の深い場所として選ばれた。
白布に覆われている写真の、歌碑の後ろに広がっている建物が小樽駅で、停車中のタクシーなどもよく見える。
写真の手前側には(写ってはいないが)三角市場のトンネルのような入り口があり、両側が店になっている。海鮮、野菜などが並び威勢のいい売り声がする。





二段階の除幕式 一回目はモールの登場

 
小樽啄木会会長・水口忠さんの話
「中国の石を船で運んできたが、台風のため遅れに遅れて19日にやっと着いた。だから昨日一昨日と急いで組み立てた。間に合うかどうか心配したが、こうして今日を迎えた」
「啄木碑を見た時に、駅も見えるように建てた。色々な位置を考えたが、この位置と角度が一番良いと思う」
   


威風堂々と


規模
  中国産の黒御影石
  碑面  150×90
  全高  250
  碑石 中国産の台石と白御影3段積み
  表面の歌碑銘 インド産の赤御影石     



除幕式の時の写真ではずいぶん台が高いと思ったが、下の写真のように雪が積もるとこの高さが必要だったのだとよくわかる。



歌碑の表 (2018年)

   子を負ひて
   雪の吹き入る停車場に
   われ見送りし妻の眉かな
               啄木



小樽日報の事務長小林寅吉から暴力をふるわれたことを契機として啄木は退社する。給料未払いのまま1907年(明治41)の年末を迎え、一家は生活に困窮する。
年明けて「釧路新聞社」に勤務決定した。釧路に向かう啄木を、節子は送りに来た。しかし、同行する釧路新聞の白石社長が遅刻した。
 

啄木の日記
「妻は京子を負ふて送りに来たが、白石氏が遅れて来たので午前九時の列車に乗りおくれた。妻は空しく帰つて行つた。予は何となく小樽を去りたくない様な心地になった。小樽を去りたくないのではない、家庭を離れたくないのだ。」
(明治四十一年日誌)

 

 

碑陰には協賛された105名(団体)方の名


歌碑建立は、インターネットなどで全国から協賛者を募り、105名の参加者があった。協力記念に碑の裏面には、名前が刻まれた。
記念の手拭いには「子を負ひて 雪の吹き入る停車場に われ見送りし妻の眉かな」の歌が書かれ、濃紺の地に大小の雪の降る美しい意匠だった。




碑陰(2018年)


この写真を撮っていると、20代前半くらいの女性二人組が、「こんなところに啄木が・・ ? ! 」と言いながら、写真を撮りにきた。

暴力をふるわれ傷ついて出ていった若き日の啄木に、『100年以上たっても、あなたは日本中に知られていて、若い人たちにも馴染みのある歌人になってますよ ! ! 』と伝えてあげたい。



(つづく)