〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

 啄木が終生恋い慕った故郷の家 その家の間取りを図面化する

郷土の本棚
 『三人の詩人たちと家』  牧水・白秋・啄木─その暮らしの風景

  • 本著は3人の詩人─若山牧水北原白秋石川啄木の家の間取りを現地調査または資料から復元することで、彼らの創作の背景にある暮らしに迫ろうという少し変わった研究書だ。
  • 啄木の項では、16歳での上京、さかのぼって故郷・渋民村での幼少期、26歳で早世するまでの放浪生活を、各時期に過ごした借家の間取りとともに紹介している。
  • 啄木が終生恋い慕った故郷。父が住職をしていた宝徳寺の間取りでは、よく遊んだという庭の池と、周囲の杉やヒバの林が印象的だ。
  • 何よりも、啄木が「わが家」へのあこがれを込めた「家」と題する詩。本著では、その夢の家の間取りを原文から類推し、図面化している。場所は「心おきなき故郷の村のはずれに」。庭には宝徳寺にもあった杉だろうかヒバだろうか、「ひともとの大樹を植ゑて」。渋民村の代用教員時代のように、子どもを集めて話を聞かせるというくだりもある。
  • 牧水、白秋の項には彼らと啄木との親交も盛り込まれている。


 ◎『三人の詩人たちと家』  牧水・白秋・啄木─その暮らしの風景
  大岡敏昭(著) 里文出版 2,800円+税 2018年1月発売


(2018-03-11 岩手日報