〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「啄木忌前夜祭」国際啄木学会 盛岡支部主催

[コブシ]


「啄木忌前夜祭」[岩手日報>風土計]

  • 没後105年となる石川啄木の命日にちなむ催しが盛岡市内で今週行われ、その中の一つをのぞいた。女性たちによるパネルディスカッション、短歌をメロディーに乗せた合唱と、楽しいひとときだった。
  • 国際啄木学会監事平出洸(ひらいでひろし)さんの講演も興味深かった。洸さんの祖父は啄木と親しかった平出修(しゅう)。1910(明治43)年に起きた大逆事件の弁護人の一人で、事件に衝撃を受けた啄木と情報交換した。
  • 明治天皇暗殺計画の容疑で多数の社会主義者無政府主義者が検挙された事件では12人に死刑が執行された。真実を究明する活動に関わる洸さんは講演で「戦前は一切事件に触れられなかったが、戦後オープンになった」として事実や背景を説明した。「当局によってつくり上げられた事件ということになっている」。首謀者とされ処刑された思想家幸徳秋水(こうとくしゅうすい)は、計画を知ってはいたが加担していなかった。やってはいなくても「思想を罰したのが大逆事件の問題点」と指摘した。
  • 啄木に時代閉塞の現状を考えさせた事件の15年後には治安維持法が制定。思想や言論弾圧が強化された暗い時代に進んでいく。ふと、今と重ね合わせてしまう。いわゆる「共謀罪」導入が進められていることだ。
  • 政府はテロ対策を掲げるが、一般市民が監視や捜査の対象になる懸念がつきまとう。閉塞の憂いが深まる。

(2017-04-15 岩手日報記事