〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

追悼・柏崎驍二さん 短歌甲子園実行委員長

追悼・柏崎驍二「最後の仕事」 小島ゆかり歌人

  • 今年12年目を迎える短歌甲子園(全国高校生短歌大会)は、柏崎驍二さんが遺してくれた最後の大きな仕事である。
  • 短歌甲子園は、石川啄木と青春の歌を顕彰するという目的で、2006年に始まった。先行する俳句甲子園に学びつつ、独自の方向を模索しながら船出したという。わたしは第二回から特別審査員を務めてきたが、実行委員長であった柏崎さんの言葉をいまもよく覚えている。
  • 俳句甲子園では、相手チームの作品の欠点を批判し、自分のチームの作品のよさをアピールする、いわゆるディベートがあるけれど、短歌甲子園ではそれはしない。ディベートによって盛り上がる俳句甲子園のよさはよくわかる。しかし、自己演出が上手な人がもてはやされる時代だからむしろ、歌のよさをちゃんと共有できる場にしたい。短歌甲子園では、審査員が作品に関する簡単な質問をするにとどめて、全員が歌だけと向き合う、若い人のためにそういう場を作ろう、と。ふだん静かな柏崎さんが、珍しく熱心に語られて驚いた。
  • 柏崎さんは優れた歌人であると同時に、ふところの深い教育者であったのだ。

(2017年3月10日「日本現代詩歌文学館『詩歌の森』官報 第79号」)



歌人柏崎驍二さん

  • 柏崎驍二さん(かしわざき・きょうじ=歌人)が2016年4月15日、白血病で死去、74歳。
  • 岩手県に生まれ、風土に根差した歌を詠み続けた。短歌研究賞と詩歌文学館賞を受賞。歌集「北窓集」で斎藤茂吉短歌文学賞を受賞。

(2016-04-16 朝日新聞