「鳴潮」【徳島新聞】
- 甲子園球場、ようやく、日が暮れなずんでまいりました…。この一文のどこが変なのか。暮れなずむは、日が暮れそうでいて、なかなか暮れない状態を指す言葉で進行形は適切ではない。「NHKことばのハンドブック第2版」にある。
- 春はセンバツから。今回も県勢の姿がない。となれば判官びいきが顔を出す。21世紀枠で選ばれた岩手の不来方(こずかた)高校。石川啄木の<不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心>を思い出した人もおられよう。校名は、南部藩の居城である盛岡城の別名不来方城に由来する。
- 冒頭に話を戻すと<普通に「ようやく暮れかかってまいりました」>などと言えばよい、とある。しかし、「暮れなずむ」のような、ある種の文学的表現を使いたくなる、甲子園にはそんなところがある。