〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木「元日の朝、晴れて風無し」福を念じる

海潮音」【日本海新聞

  • 米子市上新印の円福寺を訪ねると、ヒイラギの木に守られるように二つの大きな石が重ねられていた。石の中には金の鶏がいて、元旦に鳴き声を聞くと福を授かると伝えられている。酉(とり)年は伝承の声に耳を澄ます参拝者が増えるのだそうだ。
  • いつの時代にも幸福論はある。20年代の最後の年を迎えた平成をここまで振り返れば、バブルの頃に際立った所有欲は後退し、人とのつながりに福を見いだす存在欲が高まっているように感じられる。
  • 「何となく、ことしはよい事あるごとし/元日の朝、晴れて風無し」(啄木)。心あらたまる新年、人や地域それぞれが持つ幸せの物差しに重ねて福を念じてみる。初日の出を迎えた鶏の第一声を胸の内に聞きながら。(圭)

(2017-01-01 日本海新聞