〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

"ふるさとの歌ありがたき" 生誕特集・啄木と賢治

望む故郷に使命感 玉山区出身の工藤玲音さん(宮城大3年)

  • 「故郷を離れて、より人間としての啄木を意識するようになった。啄木と同じ故郷を持っていることに、何か使命感のようなものすら感じる」。盛岡市玉山区渋民出身で、東北大学短歌会同人・俳句結社「樹氷」同人の工藤玲音(れいん)さんは、同郷の詩人・石川啄木とその短歌を胸に置き、創作に励んでいる。


  • 生まれ育った渋民を離れて3年目。仙台の地で心が動いた啄木の1首に「稀(まれ)にあるこの平(たいら)なる心には時計の鳴るも面白く聞く」を挙げる。工藤さんも高校時代、「日々はゆくたとえばシャープペンシルの芯出すようにかちりかちりと」と、日常を流れる時間をいとおしむような歌を詠んでいた。
  • 「105年前に亡くなった人とは思えない、今の時代でも共感できる新しさ、魅力がある」。小学生のころから啄木学習や「啄木かるた」に取り組み、その歌のリズム・語感を楽しんだが、「渋民にいて啄木は身近すぎて、特別に意識したことはなかった」。大学進学のため自身も渋民も離れ、身につまされたのが啄木の望郷の歌だ。
  • 「啄木の渋民への思いは、〝神童〟と呼ばれていた渋民時代への執着だったのではないか。悲しい、そこに戻りたいというより、そのときの自分に負けたくないという思いもあるように感じられた」。自身の性格を「負けず嫌い」と分析する工藤さん。輝かしい成果を残した高校文芸を経て、新たな創作への奮起になった。(藤澤則子)

(2016-01-07 盛岡タイムス)

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