〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「港文館」の前に石川啄木の銅像… ニッポンぶらり旅


[モクレンの棒に綿菓子]


サンデー毎日 (2014年2月23日号)
 ニッポンぶらり旅/第173回 釧路(4)
  「啄木、海の冬月」太田和彦

  • 幣舞橋の南詰めから波止場に続く脇道の二階建て煉瓦洋館「港文館」は、明治四十一年築・旧釧路新聞社の復元だ。前に石川啄木銅像が立つ。
  • 港文館の小さな玄関を開けた簀の子板で靴を脱ぎ、再び戸を開けた室内は暖かい。右のカウンターに女性が一人。コーヒーのいい匂いがする。木の階段を上がり、二階展示室に入った。
  • 二十二歳の啄木は小樽に妻節子と娘京子を残し釧路新聞社に赴任。たちまち政治評論「雲間寸観」や「釧路詞壇」でめざましく活躍する一方料亭にもよく通った。パネル「啄木をめぐる女性たち〜釧路時代」は啄木を中心に当時の料亭と芸妓が並ぶ。
  • 一階の椅子に座り、熱いコーヒーをすすった。木窓の外の波止場の先の海に音もなく雪が降り続き、鴎が間近に飛び交う。