〖 啄木の息 〗

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晶子を姉と慕った石川啄木… 与謝野鉄幹は名プロデューサー


[アセビ]


【記者ノート】与謝野鉄幹は名プロデューサー

  • 恋愛をみずみずしく歌い上げ、今も読み継がれる歌集『みだれ髪』(新潮文庫)を著した与謝野晶子の名は、文学史上に輝いている。一方、夫・鉄幹の業績を詳しく知る人は、もはやそう多くないかもしれない。
  • しかし、晶子が持てる才能を存分に発揮できたのは、晶子を見いだし育てた鉄幹という“名プロデューサー”がいたからにほかならない。24歳から41歳まで、絶え間なく12人の子を産みながら、生涯で60冊近い著作を出すには鉄幹の協力が不可欠だったに違いない。
  • 昨年11月に刊行が始まった『鉄幹晶子全集 別巻』(全8巻、勉誠出版)は、そんな二人の生活の一端をうかがわせて興味深い。編集代表で鉄幹晶子研究の第一人者、逸見久美・元聖徳大教授によると、本編は晶子の著作が多数を占めるが、別巻では鉄幹のものが増えるという。
  • 結婚後の鉄幹はスランプに陥った。晶子を姉と慕った石川啄木は、与謝野家は晶子の筆一本で支えられていると日記につづったが、逸見さんは「全著作を見ると、晶子の多作の裏には鉄幹による代筆に近いものがあったのではないか」とも語る。(文化部 山田恵美)

(2014-02-08 読売新聞)