[ハクセキレイ]
高等学校 国語教科書 平成25年度用所収
◎ 石川啄木短歌
たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽(かろ)きに泣きて
三歩あゆまず
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ
みぞれ降る
石狩(いしかり)の野の汽車に読みし
ツルゲエネフの物語かな
はたらけど
はたらけど猶(なお)わが生活(くらし)楽にならざり
ぢつと手を見る
やはらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに
何となく、
今年はよい事あるごとし。
元日の朝、晴れて風無し。
いのちなき砂のかなしさよ
さらさらと
握れば指のあひだより落つ
- 大修館書店
不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
- 教育出版
不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
しらしらと氷かがやき
千鳥なく
釧路(くしろ)の海の冬の月かな
- 東京書籍
東海の小島の磯(いそ)の白砂(しらすな)に
われ泣きぬれて
蟹(かに)とたはむる
友がみなわれよりえらく見ゆる日よ
花を買ひ来て
妻としたしむ
- 教研出版
不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心
ダイナモの
重き唸(うな)りのここちよさよ
あはれこのごとく物を言はまし