〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木の親だったら……

天地人

  • かつては先生から通知表を受け取ると、期待と不安を胸にそっと開けて見たものだ。
  • ところが、いま横浜市の小中学校では事前に通知表のコピーを渡すという。成績や出席日数などを家庭で確認してもらうためとか。
  • 小中高で実際より低い評定を書き込むなどの誤記載が多数見つかり、その防止策として市教委が指示したという。「わが子の成績をもう少し良くしてもらえないものか」。最終決定でなければ、コピーを見て、そう思う親がいても不思議はない。
  • 石川啄木の親だったら、さっそく先生に頼みに行ったかもしれない。啄木は小さいころ神童と言われ、盛岡尋常中学校には10番目の成績で合格した。が、在学中に文学と恋愛にのめり込み、成績が急落する。
  • <そのかみの神童の名の/かなしさよ/ふるさとに来て泣くはそのこと>。「かみ」は「昔」の意。本人がこんな歌を詠むぐらいだ。期待していた親の落胆はどんなに大きかったことか。

(2012-10-31 東奥日報