〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

啄木作品は昭和歌謡に影響を与えた -北海道新聞-

[ナナカマド]


《啄木特集》啄木と音楽

啄木と音楽−。意外な組み合わせと思われるかもしれないが、両者は太い線で結ばれている。叙情性に富んだ啄木作品は、昭和歌謡史を彩る歌手や作詞家、作曲家に影響を与えた。啄木自身も妻となった節子に感化され、西洋音楽への関心を深めたこともあり、独自のリズムを磨いた。誰もが「歌いやすい」短歌を作ることになったと見る研究者もいる。「音楽」は啄木を理解するキーワードのひとつだ。

谷村新司作詞・作曲「昴」石原裕次郎のヒット曲「錆びたナイフ」、井沢八郎のヒット曲「ああ上野駅」。啄木を素材にした昭和歌謡は6曲はあるという。ロックシンガー・尾崎豊は、デビュー曲「15の夜」の歌詞と啄木短歌の共通性が取り沙汰された。

  • 独特のリズム感 音楽家の心に

現代にも通じる啄木短歌の音楽性は、天賦の才に加えて、啄木自身の音楽とのかかわりを無視するわけにはいかない。啄木作品や日記には、ハイドンメンデルスゾーン西洋音楽の作曲家が10人、曲名が11曲も登場するという。啄木と西洋音楽との接点は、妻・節子の存在だ。「忘れな草 啄木の女性たち」の著者、山下多恵子さんは言う。「音楽は2人をつなぐ重要な要素。啄木の歌が独特のリズムや呼吸を持ち、暗誦性の高いものになっているのは、10代のころに節子の影響を受け、音楽に没頭していたことと無関係ではないと思います」

編集委員 黒川伸一)

(2012-06-25 北海道新聞