命の歌を読む:雪の中で=東直子
今年の冬は例年より寒く、日本海側では大雪が続いている。生き物にとって、試練の季節である。雪の中の命を探りたい。
子を負ひて
雪の吹き入る停車場(ていしゃば)に
われ見送りし妻の眉かな 石川啄木
東北に生まれ、若くして家長となった啄木は、生活苦の中にあった。雪の吹き込む寒い停車場に、仕事へと出かけていく夫を見送る妻と、その妻の不安な心持ちを、凍りついた眉に察する夫。厳しい気候の中で、お互いを思いやる気持ちが伝わる。母の背にひったりと負われた赤ん坊もまた、小さな身体で寒さをこらえている。(ひがし・なおこ=歌人)
(2012-02-12 毎日新聞>芸術・文化)