〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「仕事の後」復元 +「一握の砂以後」= 1冊に

  • 歌人石川啄木の没後100年に合わせ、旭川出身の啄木研究者の近藤典彦さんが、第1歌集「一握の砂」の原型といえる歌集「仕事の後(のち)」を復元した。
  • 「一握の砂」は1910年(明治43年)12月に東雲堂書店から刊行した。啄木はこれに先立つ8カ月前、別の出版社に歌集出版を売り込んだが、失敗。その後、歌を追加するなど再編集し、「一握の砂」が生まれた。この元になった幻の歌集が「仕事の後」で、近藤さんは歌稿ノートなどをもとに「仕事の後」を復元した。
  • 「悲しき玩具」は啄木の死後、友人の土岐哀果が、「一握の砂」刊行後に啄木がつくったノート歌集をもとに編集し、1912年6月刊行。以降、これが底本となったが、啄木の意図が崩れ、ルビ振りにも誤りが目立ったという。近藤さんはこうした点を修正し、歌集名も啄木が当初考えていた「一握の砂以後」に替えた。
  • 近藤さんは「啄木没後100年、『悲しき玩具』刊行100年の記念すべき年に、二つの新しい啄木の歌集を刊行できたことがうれしい」と話している。

○『復元 啄木新歌集』近藤典彦 編
  桜出版 文庫判1050円。桜出版 TEL.03-3269-3420.

(2012-02-07 北海道新聞