煙 一
(P.88)
城址の
石に腰掛け
禁制の木の実をひとり味ひしこと
その後に我を捨てし友も
あの頃はともに書読み
ともに遊びき
<ルビ>城址=しろあと。木の実=このみ。味ひ=あぢはひ。後=のち。書=ふみ。
(P.89)
学校の図書庫の裏の秋の草
黄なる花咲きし
今も名知らず
花散れば
先づ人さきに白の服着て家出づる
我にてありしか
<ルビ>図書庫=としよぐら。先づ=まづ。出づる=いづる。
《つぶやき》
「学校の図書庫の裏の秋の草」の歌。
「黄なる花」の名は何だろうとずっと気になっていた。探してみたら、「石川啄木必携」(注)の啄木歌集全歌評釈に、【「黄なる花」は「きれんげ」「こがねばな」と呼ばれる「都草」のことであろう。】と書いてあった。ネットで検索したところ、驚いたことに三つとも全然別の花がヒットした。
「きれんげ」は、キレンゲショウマの略らしく、花は下向きに咲いた蓮のようである。またレンゲツツジのこともキレンゲというらしい。とても華やかな雰囲気の花だ。
「こがねばな」は、シソ科のタツナミソウ属で花の色は濃い紫。
「都草」(みやこぐさ)は、マメ科でエンドウの花に似た爽やかな黄色である。
三つを見比べてみて、わたしの個人的な希望(?)では、「都草」がいいなと思った。