煙 一
(P.86)
晴れし空仰げばいつも
口笛を吹きたくなりて
吹きてあそびき
夜寝ても口笛吹きぬ
口笛は
十五の我の歌にしありけり
(P.87)
よく叱る師ありき
髯の似たるより山羊と名づけて
口真似もしき
われと共に
小鳥に石を投げて遊ぶ
後備大尉の子もありしかな
<ルビ>後備大尉=こうびたいゐ。
《つぶやき》
「晴れし空仰げばいつも」と「夜寝ても口笛吹きぬ」の歌。
1969年の第1作「男はつらいよ」の中で、マドンナの光本幸子が「口笛は/幼き頃の我が友よ/吹きたくなれば吹きて遊びき」と、ほろ酔いでつぶやく。脚本家や監督に聞かないとはっきりはしないが、啄木の歌が頭のなかにあったのではないだろうか。