〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

石川啄木 著(P.76〜77)はても見えぬ


[ネジバナ]


我を愛する歌


(P.76)


   はても見えぬ
   真直の街をあゆむごとき
   こころを今日は持ちえたるかな


   何事も思ふことなく
   いそがしく
   暮らせし一日を忘れじと思ふ


<ルビ>真直=ますぐ。一日=ひとひ。


(P.77)


   何事も金金とわらひ
   すこし経て
   またも俄かに不平つのり来


   誰そ我に
   ピストルにても撃てよかし
   伊藤のごとく死にて見せなむ


<ルビ>金金=かねかね。俄かに=にはかに。来=く。誰=た。