〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

高山のいただきに登り/なにがなしに 石川啄木


[クワ]


詩歌の森へ:『折口信夫研究』創刊

  • 折口信夫(しのぶ)会から、独自な思想家・文学者として活躍した折口信夫歌人としての釈迢空)についての研究動向を記録する『折口信夫研究』創刊号が刊行された。
  • ここ数年、折口を古代ばかりでなく、近・現代の視線からとらえる新鮮な研究が目立っており、この32ページのささやかな小冊子も、その動きを表している。
  • 創刊号には、石川啄木の歌集『一握の砂』に、歌の評価や印象を迢空・折口自身が書き込みを入れたものも資料として収録された。例えば<高山のいただきに登り/なにがなしに帽子をふりて/下り来しかな>には「新藝術のむかふべき方の暗示を見る」などと書かれている。若き迢空・折口がいち早く啄木の新しい芸術性に注目していたことを示す貴重な資料、と歌人成瀬有氏はいう。ここにも自由で多面的な視線が見える。(酒井佐忠=文芸ジャーナリスト)

(2011-06-12 毎日新聞>東京朝刊)