[浅草の凌雲閣(浅草寿町)]
我を愛する歌
(P.42)
ことさらに燈火を消して
まぢまぢと思ひてゐしは
わけもなきこと
浅草の凌雲閣のいただきに
腕組みし日の
長き日記かな
<ルビ>燈火=ともしび。凌雲閣=りよううんかく。腕組み=うでくみ。日記=にき。
(P.43)
尋常のおどけならむや
ナイフ持ち死ぬまねをする
その顔その顔
こそこその話がやがて高くなり
ピストル鳴りて
人生終る
<ルビ>尋常=じんじやう。人生終る=じんせいをはる。
啄木の息・文学散歩/浅草