[パンダねこ]
我を愛する歌
(P.20)
何処やらに沢山の人があらそひて
鬮引くごとし
われも引きたし
怒る時
かならずひとつ鉢を割り
九百九十九割りて死なまし
<ルビ>何処=どこ。沢山=たくさん。鬮引く=くじひく。怒る=いかる。九百九十九=くひやくくじふく。
(P.21)
いつも逢ふ電車の中の小男の
稜ある眼
このごろ気になる
鏡屋の前に来て
ふと驚きぬ
見すぼらしげに歩むものかも
<ルビ>小男=こをとこ。稜ある眼=かどあるまなこ。
《つぶやき》
「何処やらに」沢山の人が寄り集まって何かに夢中になっている。自分も中に入りたい……が、外にも居たい。このときの啄木の目は俯瞰だったのではないか。