[タニウツギ]
『一握の砂』石川啄木 著(P.(7))献辞 著者
(P.7)
函館なる郁雨宮崎大四郎君
同國の友文學士花明金田一京助君
この集を兩君に捧ぐ。予はすでに予のすべてを兩君の前に示し
つくしたるものの如し。従つて兩君はここに歌はれたる歌の一
一につきて最も多く知る人なるを信ずればなり。
また一本をとりて亡兒眞一に手向く。この集の稿本を書肆の手
に渡したるは汝の生れたる朝なりき。この集の稿料は汝の藥餌
となりたり。而してこの集の見本刷を予の閲したるは汝の火葬
の夜なりき。
著 者