啄木の息

─ いまもなお瑞々しく語りかけてくる啄木の魅力を追い その息づかいに触れてみたい ─

 カーブを曲がり実家の村が見えた時、涙あふれ 「ふるさとの山にむかひて…」


[ブルーベリー]


「あの日の涙 故郷の山に向かいて思う」
  肥前杜氏の四季(3)

  • 蔵元での雇用期間が満了すると、離職票をもらって職業安定所ハローワーク)に求職を申し込む。失業保険の給付金を受給しながら細々と農業や漁業に勤(いそ)しむが、それだけでは生活設計は成り立たない。
  • 私も若い頃は真珠養殖やイワシ網、イタヤ貝引き、ブリやタイの稚魚採り。陸では地下街や地下鉄の仕事、井戸堀や庭師の仕事をやった。
  • 出稼ぎの最初の年、バスの終点で降りて、つづら折りの山道を下り、最後のカーブを曲がって(実家がある肥前町)駄竹の村が眼下に見えた時、涙があふれてきた。今でも思い出すと涙が出るが、あれはうれし涙か、悲し涙か分からなかった。
  • 啄木ではないけれど、たぶん「ふるさとの山にむかひていふことなし、ふるさとの山はありがたきかな」だったと思う。どこよりも何よりも自分が生まれ育った村が一番良い。

(いのうえ・みつる 1951年生まれ。「肥前杜氏」として半世紀にわたり酒造りに携わる)

(2017-06-01 佐賀新聞


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