啄木の息

─ いまもなお瑞々しく語りかけてくる啄木の魅力を追い その息づかいに触れてみたい ─

澄んで明るい青空、りんごの白い花びらが舞い落ちる…啄木


[「林檎の碑」橘智恵子実家の庭(札幌市東区)]


真生(SHINSEI)2015年 no.298

 石川啄木と花」 近藤典彦
  第三回 林檎の花


  石狩の都の外(そと)の
  君が家
  林檎の花の散りてやあらむ

  • 作歌は1910年(明治43)10月。『一握の砂』所収。
  • < 1959年(昭和34)私は東大に合格して駒場寮に入った。空を眺めに寮の屋上に出た。胸いっぱいに満ちるはずの感動は、いくら見ていてもやって来なかった。突然気がついた。ここの青空には薄汚い白幕がかかっているのだ、と。東京に空がないので思郷の病にもかかった。翌年夏お金を工面して帰省した。1ヶ月半毎日、自転車を乗り回して旭川郊外の丘や野道から、石狩川の岸辺から、空を眺めて暮らした。空は澄んで明るく青かった。雲は純白に輝き千変万化して青の中に浮かんでいた。 >
  • この時よりさらに五十年も前の札幌。その空がどんなに青かったか。その空を背景に想像しつつ掲出歌を味わってください。
  • 《意訳》石狩の国札幌。その広々とした郊外にあるりんご園。その中に建つあなたの家。澄んで明るい青空の下、りんごの樹々からは、白い花びらが舞い落ち、舞い落ちていることでしょう。
  • 歌の中の「君」は橘智恵子という人。啄木は函館の弥生小学校で代用教員をしていた時期がありその職場で橘智恵子に出会いました。
  • 明るくてさわやかで気品があって…当時満18歳の女教師に、21歳の啄木(すでに妻子持ちでしたが)は慕情をいだきます。智恵子も啄木に好感を抱いたようです。函館大火であっという間に別れの時が来て、啄木は札幌へ向かい、すぐ小樽へ。智恵子も札幌郊外の実家にもどります。


<真生流機関誌「真生(SHINSEI)」2015年 no.298 季刊>(華道の流派)