〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

遊座昭吾さん 追想メモリアル


[ヒバ]


石川啄木の研究と顕彰に力を尽くした
 遊座昭吾さん(1月6日死去、89歳)

  • 歌人石川啄木が育った宝徳寺に生まれたという深い因縁を胸に、啄木の研究と顕彰に情熱を傾けた。
  • 啄木を意識するまで、寺に生まれたことを嫌っていた。高校の国語教員だった30歳の時、寺に贈られた多くの研究書を見て縁を感じ、研究の道へ。著書「啄木と渋民」は渋民の風土と啄木の関係を追求。「啄木秀歌」は独自の視点から啄木の肉声をよみがえらせた。情熱と愛情に満ちた語り口から生徒に慕われ、8年前には「最終講義」と題した講演会を教え子たちが盛岡と東京で開いた。
  • 国際啄木学会の設立メンバー。89年から初代事務局長、95年から2代目会長として啄木研究の進展に貢献した。石川啄木記念館建設も中心となって活動した。
  • 啄木没後100年の2012年5月、ともに宝徳寺を訪ねて話を聞いた。

   ふるさとの寺の畔(ほとり)の
    ひばの木の
   いただきに来て啼きし閑古鳥!

  • 育った寺を詠んだ歌を挙げながら、かみしめるように話した。「あの歌は、啄木は相当苦労したよ。何を言いたいのかというと、閑古鳥の鳴き声でしょ」「そういうことが分かりかけてきた時に、宝徳寺に生まれて良かったと思った。世界に一つ。啄木と同じなんだもん」
  • 話の途中、立ち止まるような小さな間が何度もあった。ゆっくりと、静かに、啄木の声に耳を傾けていたのだろうか。

(2017-01-30 岩手日報