〖 啄木の息 〗

石川啄木の魅力を追い 息づかいに触れてみたい

「ZARD/坂井泉水…展」始まる 〜7/11

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トベラ

ZARD展、名曲の「詞」たち きょうから町田で

  • 東京都町田市は延期されていた「ZARD/坂井泉水 心に響くことば展」について、6月1日から7月11日まで市民文学館で開催すると発表した。

  • デビュー30年となるZARDのボーカル、坂井泉水さん(享年40)の「詞」に焦点をあてた企画展。約20点の直筆原稿のほか、坂井さんが好きだった石川啄木の歌との言葉の重なりを解説する展示もある。スマートフォンのアプリを使って歌が聴けるしかけもある。(前川浩之)

(2021-06-01 朝日新聞

 

ZARD展、名曲の「詞」たち きょうから町田で:朝日新聞デジタル

SDGs と 宮沢賢治・石川啄木 盛岡市で展示会

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クロマツ

岩手県盛岡市 宮沢賢治石川啄木からSDGsを考える展示会

  • 宮沢賢治が残した「世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はありえない」という言葉は、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念と同じ。また、啄木は「林中の譚」という作品で、自然の中でおごり高ぶる人間の態度から自然に対するふるまい方について考えを示している。
  • 展示会は今月末まで。

(2021-06-02 日テレNEWS24

 

岩手県盛岡市 宮沢賢治・石川啄木からSDGsを考える展示会|NNNニュース

啄木や寺山修司らの口語短歌 俵万智さんの時代をすくい取る力

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コダカラベンケイソウ

北斗星(6月1日付)

  • 歌人俵万智さんの第1歌集「サラダ記念日」は歌壇に衝撃を与え社会現象を巻き起こした。初版はバブル景気に浮かれた昭和も末の1987年5月。ミリオンセラーを記録した。時代を切り取る言葉のセンスが巧みだ。からっとした恋愛の歌は今なおみずみずしい。〈「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの〉。
  • 石川啄木寺山修司ら先人が挑んだように、口語短歌そのものは新しいものではない。俵さんの歌は口語でありながら、五七五七七の定型リズムに乗っている。古語と現代の日常語を自在に使いこなす技法が光る
  • 俵さんの最新歌集「未来のサイズ」が今年の迢空賞に選ばれた。そのうちの一首〈手洗いを丁寧にする歌多し泡いっぱいの新聞歌壇〉。やはり時代をすくい取るのがうまいなあ。

(2021-06-01 秋田魁新報社

 

北斗星(6月1日付)|秋田魁新報電子版

<火は大洪水の如く街々を流れ 火の子は夕立の雨の如く…> 函館大火 「啄木日記」

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ルピナス

塔短歌会 青蟬通信 2021年5月号

啄木と函館の大火 / 吉川 宏志

  • 四月号で、石川啄木が大火をきっかけにして、約五か月住んだ函館を離れたことについて書いた。当時の啄木の日記が非常に興味深いので、もう少し書き続けたい。
  • 函館は大火の多いところで、昭和九年(一九三四年)にも、二一〇〇人以上の死者を出した火災が起きている。強風が吹く土地であるためらしい。啄木が遭遇したのは、明治四〇年(一九〇七年)八月二十五日の大火で、死者は八人と少なかったけれど、一二〇〇〇戸以上の家が焼失したというから凄まじい。現存する旧函館市庁庁舎は、この火事の二年後に建てられたものだそうだ。
  • 啄木は、日記「函館の夏」で、炎を次のように描写している。

「火は大洪水の如く街々を流れ、火の子(ママ)は夕立の雨の如く、幾億万の赤き糸を束ねたるが如く降れりき、全市は火なりき、否狂へる一の物音なりき」

  さすがに迫力のある文体である。大火を見たときの興奮が伝わってくる。
(2021年5月号 塔短歌会)

 

啄木と函館の大火 | 塔短歌会

啄木や歌人たちが短歌をアップデートさせたこと

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タンチョウソウ

講義No.10975

石川啄木の新しさ 近代短歌の「アップデート」とは

石川啄木の試み

 明治時代の日本は近代化を遂げ、社会は大きく変化しました。近代化の波は文学にも及びます。短歌も例外ではありませんでした。そんな時代に、万葉集の時代から続く短歌を適応させる役割を果たしたのが、明治を代表する歌人石川啄木です。代表作に「ふるさとの訛(なまり)なつかし/停車場の人ごみの中に/そを聴きにゆく」という短歌があり……。

言葉の近代化に向き合う

 同じく啄木の「何やらむ/穏かならぬ目付して/鶴嘴(つるはし)を打つ群を見てゐる」という短歌は、「テイル」という形で終わります。これは当時の工夫の一つでした。古典では、時を表す助動詞は「つ」「ぬ」「たり」「り」「き」「けり」と多くの種類があり、和歌(昔の短歌)にも多く使われています。明治期に入って、書き言葉を話し言葉に近づけようとする「言文一致運動」など言葉の近代化によって、こうした助動詞はすべて「た」に集約され……。

アップデートは続く

 短歌が近代化に適応できたのは、啄木のように、当時の歌人たちが短歌をアップデートさせたことが大きく関係しています。こうした試みは時代を経ても受け継がれ、現代でも口語を交えて表現する俵万智の『サラダ記念日』のような短歌が生まれ続けて……。

 

◎河野 有時 先生
  京都ノートルダム女子大学
  国際言語文化学部 国際日本文化学科 教授

(Yumenavi 夢ナビ編集部)

 

夢ナビ 大学教授がキミを学問の世界へナビゲート

大森浜で啄木も見ていた月

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パープルスティック

啄木も見つめた天体ショー

  • 石川啄木座像がある大森浜わきの公園では、天文ファンらが待ち構えた。津軽海峡の水平線から、部分食が始まった状態で昇り、午後8時10分ごろにはほぼ地球の影に入った。(阿部浩明)

(2021-05-28 朝日新聞

 

啄木も見つめた天体ショー:朝日新聞デジタル

スタンプラリー「啄木鳥探偵處」」クリアファイルやポスターのプレゼントも! 6/1〜9/26

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「啄木鳥探偵處」スタンプラリーin岩手! チラシ

石川啄木記念館

「啄木鳥探偵處」スタンプラリーin岩手!

~昨年このイベントは残念ながら中止となりましたが、今年の開催が決定しました!~

・開催期間:令和3年6月1日(火)~9月26日(日)
・時間:各施設で異なります。
・場所:石川啄木記念館、盛岡市先人記念館、盛岡てがみ館(盛岡市)、
    野村胡堂・あらえびす記念館(紫波町

・料金:要入館料

  • 2020年4月から放送されたテレビアニメ「啄木鳥探偵處(きつつきたんていどころ)」。岩手が誇る先人・石川啄木金田一京助が登場しました!!
  • これを記念して、アニメキャラクター(啄木・京助・勇・胡堂)ゆかりの4館でスタンプラリーを開催します。(※啄木・京助・胡堂…岩手出身。※勇…東京出身。啄木の友人で、啄木没後に岩手を訪れた。また、盛岡てがみ館には吉井勇の資料があり、第62回企画展にて展示する。)
  • スタンプ3個(3館分)を集めたら、オリジナルクリアファイル(非売品、数量限定)をプレゼント。このスタンプラリーでしか手に入りません‼
  • そしてスタンプ4個(4館分)を集めたら、アニメポスター(非売品、数量限定)をプレゼント。
  • さ・ら・に、啄木役・声優の浅沼晋太郎さんのサイン色紙(4名様)ほか、素敵なグッズが抽選で当たるWチャンス賞の応募券をプレゼントします。ぜひ、4館全て巡って、応募してくださいね♪

石川啄木記念館)

 

「啄木鳥探偵處」スタンプラリーin岩手!- 石川啄木記念館

 

チラシ

https://www.mfca.jp/takuboku/wp-content/uploads/sites/9/2021/05/20210523144404599.pdf

野村胡堂と石川啄木 「野村胡堂・あらえびす記念館」特別展 〜9/30

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オガタマノキ

野村胡堂の交友関係に迫る特別展 テレビアニメ「啄木鳥探偵處」にちなんで

野村胡堂・あらえびす記念館」(紫波町)で現在、特別展「胡堂交友録 アニメ『啄木鳥(きつつき)探偵處(どころ)』と実在の文士たち」が開かれている。

  • 特別展ではアニメに登場した実在の文士たちと胡堂の交流関係を同館所蔵の書簡などの資料を通じ、アニメとは異なる実際の交流の様子や交友関係について取り上げる。胡堂にとって盛岡中学の後輩に当たる啄木との関係では、啄木の親友で新聞記者をしていた岡山儀七からの書簡を展示。書簡の内容は啄木を題材にした映画について胡堂が書いた新聞記事に関する感想で、「あの時代だって啄木のほんたうに畏敬した先輩はあなた様であったと存じます」と書いている。
  • 無料のギャラリースペースではアニメのパネル展も実施。胡堂が盛岡での思い出について書いた記事も紹介。その記事中にも啄木の名前が登場する。

(2021-05-24 盛岡経済新聞)

 

盛岡経済新聞
https://morioka.keizai.biz/headline/3313/

 

“啄木の小説「赤痢」論” ワクチン等のない時代に赤痢に苦しむ人々を描く <3(おわり)>

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ナンジャモンジャノキ

「日本文学 5」特集・病と文学

石川啄木の小説「赤痢」論 <3> 

  ──可能性を秘めた疫病文学──
                  池田 功明治大学

 

五 伝道師の英雄の夢から破局

  • かくして松太郎は、新しい信者も増えて十一軒にもなり、世の中が面白くなっていた。彼は信者が増えた時には教会堂が村に建つ夢をみる。
  • 松太郎は、お由という寡婦が家を三円で貸してくれるというのでそちらに引っ越す。お由に天理教への入信を勧めると、「俺みたいな悪党女にや神様も仏様も死る時で無えば用ア無えどもな。(中略)酒え飲むのさ邪魔さねえば、何方でも可いどら」と言い信者になってくれる。そして、お由の家の門に「神道天理教会」と書いた表札を掲げた。
  • ところが、すべてうまくゆくわけではなかった。お由に異変が起こる。お由は赤痢に感染してしまう。そして松太郎に悪態をつく。「ええ此嘘吐者、天理も糞も……」と怒鳴り、さらに「畜生奴! 狐! 嘘吐者!…」と言って倒れる。
  • 松太郎は、その倒れた音を聞きながら、底の知れぬアナの中へ落ちてゆく状態になって小説は終わる。

おわりに

  • 感染症である結核ハンセン病の小説は多く書かれているし、スペイン風邪もそうである。赤痢に関しても、小説の中に少しだけ描かれているものはある。ただし、テーマとかかわる形で描かれているのは、長塚節の『土』、もう一編は、有島武郎「お末の死」。しかし、この二編といえども啄木の小説「赤痢」のように、赤痢から起こる詳細な村の強行診断や交通遮断、強制隔離等が描かれているわけではない。さらに言えば、そのような疫病パニックに陥った村人の不安に乗じて新興宗教を布教しようとすることへの批判が描かれているわけでもない。
  • この新型コロナウイルスの恐怖に襲われている現代において、不安や恐怖をかきたてる疫病パニックと、それにおののく民衆が宗教にその救いを求めるメンタリティの根元的な有様や、またその疫病退散を布教の手段にしようとするところには、共通する一面があるかもしれない。
  • そういう意味で、小説「赤痢」は時代を越える可能性を秘めた疫病文学になっていると言えるのではないだろうか。

 


 

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「日本文学」中扉 特集〈 病と文学 〉



「日本文学 5」特集・病と文学
 2021年 VOL. 70 日本文学協会編集・刊行

 

(おわり)

“啄木の小説「赤痢」論” ワクチン等のない時代に赤痢に苦しむ人々を描く <2>

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ウメ

「日本文学 5」特集・病と文学

石川啄木の小説「赤痢」論 <2> 

  ──可能性を秘めた疫病文学──
                  池田 功

 

二 強行診断、交通遮断、隔離病舎

  • 啄木はこの「赤痢」の執筆と平行しながら、自身にとって初めてとなる新聞連載の長編小説「鳥影」(「東京毎日新聞」一九〇八年十一月~十二月)を執筆していた。この「鳥影」のなかにも赤痢が描かれている。
  • 「鳥影」の舞台は啄木の故郷の岩手県の渋民村。物語のほとんど終わりのところで、小学教師の智恵子は盆踊りの夜に腹痛を起こし赤痢になる。医師は「赤痢──然も稍烈しい、チフス性らしい赤痢であ」ると診断し、担架に乗せて隔離病舎に入れる。家の門には「交通遮断」の札が貼られた。
  • このような赤痢が、個人ではなく村そのものを襲った場合はどうなるのであろうか。まずは強行診断、そして交通遮断。赤痢が発生したら、衣食住の「根本から改めさせる」か「全村を焼」いてしまうかであった。しかし、実際に行われたのは、「全村の交通遮断」である。このように村が交通遮断されることを、啄木自身は満十五歳の時に故郷の渋民村で体験している。

三 新興宗教としての天理教

  • このような赤痢の恐怖に襲われていた村に、二十四歳の横川松太郎が天理教の布教師としてやってくる。母親のお安が父親の作松に「天理教の有難い事」を説いたところ、作松は熱心な信者になり家の土地等すべてを売り払って「村の中央の小高い丘陵の上」に大会堂を建てた。しかし、父母が亡くなったために、松太郎は会堂に寝起きし天理教を学んだ。
  • 啄木自身、一九〇八年十一月十四日の日記に、大和(奈良)出身で新詩社「明星」社友の藤岡玉骨から天理教の話を聞き、「天理教には、多少、共産的な傾向がある。もしこれに社会の新理想を結付けることが出来たら面白からう」と記している。

四 新興宗教の布教と病とのかかわり

  • 小栗純子は『日本の近代杜会と天理教』で、安政年間から明冶四〇年頃にわたる入信動機の一覧表をつくり、以下のように病がその主な入信動機であるとまとめている。「天理教信者の入信の動機は、不治の病いを救けられ、信仰に入ったケースがほとんどである」と記し、「天理教に救いをもとめるほとんどの人びとが、天理教に病いからの解放をのぞんだ」と記している。
  • 病人と貧しき人々が、その布教のすべての対象でないのは当然である。しかし、松太郎の布教は貧しい村人を対象に、赤痢という伝染病からの救いをその手段としてゆく。


「日本文学 5」特集・病と文学
 2021年 VOL. 70 日本文学協会編集・刊行

 

(つづく)